介護士になるのは、向き不向き次第
人生の途中から介護業界へ
ずっと同じ職に就き、経験を積んで〈プロ〉といえる仕事。
何か専門をもち、自分の知識や経験に裏打ちされたアイデアを使い収入を得る。
そうゆうのに憧れてた。人生の前半では諸事情により叶わなかったけど。
何歳でも、自分で働いて収入を得られる仕事がしたい。
私が成人した時は、田舎じゃ、男性は仕事/女性は家事と子育て。けっこう色濃く残っていた。自活を望む女性は相当に優秀な、強い意志をもつ人。
「うち、そんな大層な経歴ないで」と軽やかに笑う女性も、話してみたら(いゃいゃ…女手1つで子供3人を育て上げてるやん。自覚ないだけで充分に気丈ですって)と、本人は無自覚である。
男性は、当時〈男なら誰でも〉社会人として就職/自営すべし、で。人生の選択肢が男女ともに今ほど多くない。ネット等の環境じたい皆無、自宅で勤務やリモートなど兆もなく、携帯電話も珍しかった。
特に優秀でもない、若かった頃の自分へ聞きたい「あんた、何がしたいの?」と。
きっと20歳の私は「〇〇するし」と明確に答えが出ない、漠然としたイメージしか持てない。私はフワフワした若者だった。
20代の先輩に、40代50代が学ぶ
対して、今の私が一緒に働く同僚たち。20代で「福祉系の専門学校を卒業して。就職しました」「介護士歴4年目」「10年介護士してます」という人達。
目的をもって「自分には向いてると思って」と言う。
介護職歴が長い20代先輩に、私もお世話になった。
丁寧に教えて貰ったし、惜しみなく助けて貰った。
地に足つけたしっかり者が多い。
20代の人達、若くして介護士になった彼/彼女が、20代から残りの人生ずっと、介護士を続けるのか?
おそらく大半の人は〈途中で〉抜ける。
特に、女性は「結婚したら一旦は辞める」とはっきり言う。若い男性は業界自体に見切りをつけ他業種へいく。
或は、福祉界での出世を目指す人もいる。
出ても戻り易いのが介護業界。出たり入ったりする人も意外といる。
途中転職組は、定年までいく人が多い。
女手一つで子供を育て上げた女丈夫も、たくさん在籍するのが介護業界。
40代50代で再び他業種へ移る技量、才覚も労力も絞り出すのは難しくもある。
他業種へ条件良い転職が叶う中高年は、幅広い人脈をもつ人が多い。
経験はもちろん、彼/彼女の誠実さや人柄を見込んで声を掛けられ、介護士を辞め、他業種へ移った人もいる。
働き続けられること、人によっては嬉しいのょ。
子育てを終えた人が40代50代から開始、10年20年は働ける。体力ある人なら、定年後も職場に頼まれて残る。珍しくない。
本人が希望したら70歳でも働ける。
「定年したらのんびり」と望む人には信じ難いらしいが、還暦すぎても介護職を何年も続けられる人は、基本的に体力に恵まれた人が多い。
じっとしてるの「あかんねん」と笑う。
介護の仕事を始めて知ったが、意外と「のんびりすんの苦手」な人って多い。
定年60歳、仕事してないと「老け込むわ」「何もする事ないやん、かなんわ」と言う。のんびり定年後ライフが「合わへん」と感じる。
強者になると「家にずっと居るん?夫と一日ずっと顔合わせんの?かなわん」なる本音を隠さない職員さんも。「ここで皆と過ごす方がええわ」と言う。
シングルマザー(ファーザー)で介護業界にくる人も多い。
家庭がある人には、介護職特有の【時間の融通がきく仕事場】は有難い。
土日祝は働く時もある代り、好きな曜日(時には土曜日曜も)を希望して休める。
職場が人手不足すぎ、休み保証もされない施設は令和の今でも多くある。
休みに融通がきく職場、休日取得の実態は転職活動中の当り外れ、
求職者にとっては第一関門と言える。
介護士ってイメージ悪いか??
昔、田舎じゃ「介護?誰でも出来る」「頭が悪く、どこも行けない人の行く仕事」等と見下されてた。意外と年配者に多くて(いずれ世話になるのに)と不思議だった。
露骨に言わなくても「え?介護の仕事?」とバカにする人もいた。
たぶん、今でも居るだろう。
他業種で働いてて転職、ヘルパー講座(今は名称が変わってる)を受け、高齢者向け福祉施設へ就職した時に、1人を除き、友人知人の全員が「え?出来るの?」「無理とちがう?」「あんた、そんなタイプとちゃうやろ」とも言われた。
「性格に難あり、そんなに短気で介護とか向いてへんわ」と心配された。
違う業種で働いてた頃、介護の仕事を実際にしてみる前、イメージだけ先行してた。
イメージだけ。これは他業種でも言えること。
その職業のもつ社会的イメージがあり、実際の経験ない人達の(こんな感じ)という思い込み。テレビのドラマ、映画や小説などの影響もある。
あと、収入が高そうな職業か否か。人気がある職種か否か。
人気に限って言えば〈時代〉で変動し、あまりアテに出来ない。
とは言え、テレビドラマや映画の題材になり、介護士が人気職になる事は…
どうだろう。飲み会の席で「介護なんて下の仕事」「介護士なんて誰でもできる仕事」と言われた事もある。言われたんですょ、実際に。
お酒の勢いに絡め、自分の偏見を笑いながら発言する奴、見下したくて言う奴への説明。そこへ労力を使いたくない、笑わずに無視。自分の仕事内容を、全く関連ない他業種の人へ説明するのは、酔ってない時でも案外と難しいと思った。
どんな業種でも「イメージと全然ちがう」など多々ある。
しかも、働き始めて知ったけど、『介護』の微妙な部分が勤務先でちがう。
基本的な知識や能力が一定レベル必要、その上で、職場独特の事情があり、求められる能力が違う。能力というか『機転』『段取り力』という言葉が適してる。
介護士への門は広くて、奥が細い
介護士と仲居には共通点がある。
昔、友人の1人が住み込みで仲居バイトをした。その時の感想が印象的で、20年ほど経っても覚えてる。彼女いわく「料亭の仲居って、常に3つ4つ先を読まなついていけへん」「けど、女将さんは10くらい先まで読んではるわ」
「料亭の仕事って段取りが大半をきめる感じ」と力説していた。
そんな仕事に何故わざわざ??住み込みを??と訝る友人一同に、「祇園やし、好奇心でいった」と笑ってたが、実際に大変だった様子。
女将さん、若女将さんや先輩仲居さん軍団に、おっとり喋る彼女は「遅いで、はょし」←京都弁発音デス と、ビシバシ鍛えられたそう。
ヒー ホー (>_<) 言っていた。お休みほぼ無かったし。
場所が祇園やし。「何事も経験やと思ってん」と笑う彼女は、他の土地なら住み込み仲居を選ばないと言った。これは祇園のもつイメージゆえ。京都駅前で住み込みの仲居はしないのね…祇園でも駅前でも、仲居職に求められる技は似ていると思うが。
彼女の言う段取り力の意味を、当時の私には知る由もなかった。
それが、10年以上も後に介護士として働き始め、急に彼女のエピソードを思い出し(もしかして、こういう感じ??)と思い至る。
料亭や旅館の仲居職には(大きい目立つ事から細々した事まで『する事』たくさんありそう)と想像できる。しかも、様々に同時進行でこなす能力がないと務まらない。
なのに、仲居を誰でも出来る仕事と勘違いする人が、世の中にはけっこういる。
彼女いわく「出来る人はできる、あかん人はあかん」
「あんな細々と配慮を要求される仕事むりやったわ」と。仲居だけでなく飲食関係の接客業も、介護士も〈手軽にできて訓練不要〉と考えられやすい。
実際に働いたら全く異なるのに。
「誰でも出来る職」と見なされるのは不思議。どちらも、先を読み自発的に動く能力、段取り力は必須。守備範囲が広く『やるべき事柄』が細々しく、しかも、メチャ多いので自分なりに把握する力がないと務まらない。
「色んな人がきて去る仕事やわ」と、バイトで貴重な経験と彼女は喜んでいた。
私が介護の世界に入ったのは、失業保険を貰いながら職業訓練に通えたから。
あの時、幾つか選択肢はあった。
介護以外の訓練コースもあったが、その時期の、自分に合う条件;日程や学校の場所を絞ると介護。で、25名ほどのクラスに3ヶ月毎日通いヘルパー資格を取った。
卒業の前に「資格は取ったら即使え」と言われた。