肉体が衰えたとき、欲しいもの②
私は、長寿を望まない
もしも、自分に子供がいて、子供が独立して孫ができたら。少しでも長く一家の成長や行く末を見届けたい、と願うだろう。ある時、知人が「孫の結婚式で、隣県へ行ってたんょ」「来週、孫のお嫁さんに着付けする約束や」と、シルバーを基調にしたモダンな着物に、青色の美しい帯を準備していた。
「けど、出来ない仕事も増えてきた」と彼女は言う。長年、プロの着付け師として成人式の振袖や、結婚式の留袖など引き受けてきた。親子孫の三代に渡る顧客がいる。
「もう花嫁衣裳は着付けられへんわ」と言う。今は、出来る範囲で引き受けつつ、可能な限り自宅で仕事をしてたい。10代で着物に魅せられ、80代の今でも現役をしてる彼女の、最大の望み。
孫とも、孫のお嫁さんとも仲良しの彼女だが「特に長生きしたいとは思わへん」と言い切る。孫に子供が生まれ。ひ孫にも会えたら嬉しい。けど、仕事をして「何歳まででもいいねん」と笑う。羨ましいくらいキッパリしている。
介護施設で働いていると、お孫さんが子供を連れて面会に来る、そんな家庭もある。
嬉しそうな様子の利用者さんを微笑ましく見守る。
私の場合は〈子孫繁栄、ないしなぁ〉〈今も老後も自分なりに、楽しく暮らしていく。でも、長くなくていい〉と思ってる。彼女のように長さより質の方が欲しい、私も。
読みたい本は、今のうちに読め~
めちゃ長編の小説を〈完結した時、全巻まとめて読みたい〉と考えてた。しかし、予測外、作者が若くして世を去って物語は未完のまま。著者も読者も無念で、続き、どうする?どうなる?モンモン状態。悩んだ末、その小説は読まないことにした。
作者の都合ではなく、自分の〈長編を読む意欲〉が失せる可能性も高い。
美味しそうなお菓子を「後日、楽しみに食べよう」で、賞味期限が切れたり、誰かに食べられてたり…。どことなく「楽しい事は後にとっておきたい」と置きっぱなし。「きれいな服は、特別な時に着るから置いとく」等。後回しグセ、私にはある。
服は『旬の気分』があるし、食べ物は賞味期限がある。
今を集中してない、後回し癖の自分に落ち込む。
長編、しかも重い内容の本は「体が若い時は読める。だんだん気力が抜けるから、後回しアカンで。老後には読めへんで」と、昔々、年上の知人からアドバイス受けた。
長い文章、長編映画、シリーズ物の小説など。
今すぐ読め、読みたければ!!と自分に言い聞かせている。
体力がなくなったら、短編小説にする。
今から集めなくっちゃ。え?今すぐ読むべき???
老後もたのしむ
介護士として働く職場には、元気な60代パートさん/契約社員さん達がいる。「60歳になった『ほな、サイナラ』って出来へんわ」「ある日から、生活リズムを変えるん?かなんわ」と皆さん、同じことを言う。
「いつまで働けるか分らへんけど、今、仕事を辞めんの、イヤやわ」と言い切る。
60歳、老後になりました。この認識は薄く〈先月と変わってへんし、そら、そやろな〉と納得。で、60歳すぎて、70代になってもフルに働いておられる。
介護士の場合、職場によるが、定年後の再雇用で〔夜勤をしない/回数が減る〕等の、仕事条件が変わる。業務内容は同じで、少しだけ勤務が軽い。その分、給与が低くなるが、体への負担は考慮される。※考慮できない激務・超人手不足な職場もある
勤務が軽くなったら、その分の余裕があるし好きな事する。
夜勤の明けで遊びに行くパワーを持つ、体力・気力に恵まれた人が多い職場。
介護士を長く勤める人は、そんな元気者が多い。「現役時代から楽しかったけど、老後って特に何も変わらへんわ」「昔より体力は落ちたと思うわ」と笑う。
老後やし、ゆっくり過ごす。
でもね、楽しめる事は大いに楽しみたい、仕事もしたい。
一人で楽しめること、西洋占星術をもっと知りたい。
友人や元同僚とお茶したり、お出掛けもする。
楽しみってシンプルで良いから、好きな人達と会う。
先輩職員さんの姿に、そう思う。