玉置神社へお詣りして交通事故に遭った話⑥

数年前のこと。
奈良県の南部で交通事故に遭った。
しかも、人生初の経験。
霊験あらたかと評判な玉置神社へお詣り、その帰り道、十津川村でのこと。
これ👆👆ホンマ、何なんやろ…
せっかくお詣りして、こんな目に遭う!?
事故の検分は淡々と進む。
旅先での交通事故に、不安で。そんな被害者(私達)の心情など、警察には大きな事ではない。日々、沢山の事件事故を見てる『大多数の中の1つ』の交通事故。
もし、負傷者がでて、救急車に乗せられ病院へ運ばれ、等と、これが流血沙汰の交通事故なら。違う展開だったと思う。
車が破損のみ(!)の事故。
なにしろ警察を待ちながら、被害者と加害者が世間話をしてる。
警察の側からみれば《軽い案件》と扱える。
その時の、母と私の、最大の懸念「車が壊れたから」「十津川村から次への移動手段がない」大問題。それが相手ドライバーの提案で「宿泊地の吉野への移動が出来る」と決まった。その時点で、強い緊張が解けていた。
次から、旅先ではレンタカー
どう考えても事故の原因は明白、過失割合ウンヌン等の複雑な状態でもない。
検分を済ませ警察は五條市へ帰っていった。
さらに待つこと半時間以上。
今度は、相手(加害側の)ドライバーさんの会社から車が到着した。上司と同僚か?この方達も、やたら「ご高齢のお母さまを」「こんな目に遭わせ」と、母への謝罪がすごい。
日が暮れ、真っ暗な闇で顔が見えにくい。
一体、うちの母って何歳と思われてる??
レッカー業者も到着した。
問題はここから!!
旅先で、自家用車が壊れた。レッカー業者に壊れた車を預け、その後が「どうなるのか?」を私も母も知らない。和やかな空気は一気に消える。
知人に勧められ加入した母の車保険は、かなり手厚いタイプ(当然お高い)。なんと裁判になった時に、その費用までカバーしてた。
でも!!
レッカー移動の、移動距離フルカバーはない。
キロ制限がある。旅先から自宅まで…??
事故現場から自宅方面の、途中の市町村に運び込み、直してもらう場合、
後日、電車に乗って車を引き取る???
『途中の修理所』と言うても、なにしろ事故現場は奈良県の南部ゆえ、その途中ですら奈良県内。頭を抱える母「後日、車の引き取りに、わたしが奈良に来るとして」「え?どこの市やったら運転できるやろ??」
この修理終えた車を、後日、どうやって自宅へ戻すか?問題。
最終的に、壊れた車を《母の家がある土地》まで戻さないと困る。
和歌山県のレッカー車が、可能な範囲の中で最も近い修理所へ運んでも、まだまだ自宅から離れてる。それで、「自宅近くの修理所へ届けて欲しい」と希望したら、相当な金額。「ど、どうするの??」と私。
再び、顔が引きつる旅人親子…
追突事故を(全面的に過失)起こした相手の車にも、保険加入がされていた。
おそらく上司の人が来たのも、保険や支払いに関係あるからだろう。
こちらに全く非がないこと。
相手の保険も(おそらく)手厚いだろうこと。
この2点が大きかった。最終的に「任せて下さい」と言われ、相手が全面的に負担して、後日、車は母宅の町へ届けられる。
追突してきた相手が「しっかりした人で良かったわぁ」が私達の感想。
人生初の交通事故の相手が、誠実な人で本当に良かった!!
とはいえ、遠出した先で、自家用車が事故に遭うと、こんな大変な話になる。
今後、旅先で車を使う場合、レンタカーやわ!!
そう決意した出来事だった。
暗闇の山を走り、吉野を目指す
本来なら既に宿に着き、美味しい夕食や温泉を楽しんでいる時間。
18時は越えていた。
玉置神社の境内では雨に降られた。それ以外の道中は素晴らしい晴天、吉野へ向かうために北へ向かう道も快適で、爽やかだったのに。日暮れが早く、あっという間。
山の夜は早い。この時間、すでに闇の中。
まだ母と私は十津川村に居た。再び宿へ連絡を入れると「お待ちしてます、気を付けて来て下さい」と言われる。吉野へは1時間半で着かないだろう。
警察検分が済み、壊れた車がレッカーされたら、もう十津川村から去る。
1台の車へ案内され、同僚らしき若者が運転し、私達を吉野へ送ってくれる。
ここで相手ドライバーさんと別れた。
最後まで丁寧に対応をされた。
加害者だから当然?私は、そう思わない。
事故を起こしたら、焦るし冷や汗ものだろう。でも、逃げずに最後まで現場に残り、私達へ対応された誠実さ。
どこの世界にも、自分に落ち度があっても、絶対に認めず、上手く逃げることばかりを考える。己の利しか考えず、被害者すら騙す。そんな人間もいる。そんな輩が事故の相手だったら、不愉快きわまりない時間になる。
逃げずに、誠実に出来る限りをした。
そこを評価したい。
もうお会いする事はない。奈良県内を、車の移動も多いと言っておられた。安全運転で、今後も元気でお過ごし下さい、と思う。
それにしても、本当に広い村だ。
これを「村」って言えるのか??

村の大半が山、それも、ホンワ~カ丸い形状じゃない尖った木の群れ。
人が住めない地区の、シャープに尖った樹林帯が続く。
完全な暗闇になった山の樹々を、時折、通り抜ける車のヘッドライトが照らす。雨上がりの、樹々のシルエットが不気味に揺れる。
運転してくれる若者も、聞けば奈良県の人だと言う。
ただし「自分の業務では十津川方面へ来ないんです」と言われ、初めての山の中で、内心((このお若い衆、大丈夫か?))と不安に…。そんな心配をよそに、真っ暗なグネグネとした曲がり道の連続を、車は進む。
昼の山間部は爽やか、夜の山って不気味としか思えない。
景色も見えない闇を走り続け、無事に吉野へ着いた。近鉄の吉野駅から近い宿が連なる地区、昼間は賑やかだが既にどこも戸が閉まり、ひっそりしてる。
若い同僚さんにお礼を言い、ここで別れた。
宿にて。今後の対策を練る
電話を入れてたが、ここまで遅れるとは予想以上らしい。
迎えてくれた宿の主人は「えらい目に遭いましたな」「ひどいですね、旅行先での事故で。しっかり相手へ請求ですょ」と、なぜか憤慨されている。
ご自身も旅先での事故の経験があり「保険会社には気を付けて。上手い事いうて、丸め込んできますからね」と、なかなか具体的なアドバイスを下さる。
とっくに厨房は火をおとした時間。それでも「用意してますょ」と、温かな宿の自慢料理が並ぶ。本気で《下手したら今夜は野宿か》《山の中に放置され動けない》などと想像したので、宿の待遇は有難くて仕方なかった。
事情を知らされているのだろう、給仕して下さる方や仲居さん達の対応も心温かい。
「お湯も、良かったら是非。まだ開けてますので」と案内される。
夕食を終える頃に、母の様子がおかしい。
部屋へ戻るとトイレに籠ってしまう。どうやら体調を崩したらしい。
ストレスが過度にかかると、ジッと黙り込む。ひどく口数が減るのが母の性質で。ヒステリックに喚く怒鳴るタイプよりも、時には難しい。一見、大丈夫そうに見せ、内に色々と溜め込む。それが今回も出てしまった。
宿の湯にも「入らんと寝るわ」と言い部屋に残る。
色々と考えてたらしく、私が温泉から戻ると「あのな」と深刻な口調。
「明日は、吉野の観光をしょ」と言うてたけど、早々に家へ帰りたい。先ずは、壊れた車の代替車を受け取りたい。「のんびり観光する気分にならへん」と言う。
田舎暮らしゆえ車の確保は最優先。
旅を終えた次の日から「車がないと困るわ」と言う。ごもっとも!
吉野の名刹、金峯山寺で行われる早朝の勤行(ゴンギョウ)、これには参加したい。旅行の楽しみの1つだったし、早朝なら時間もとれそう。それから朝ご飯を頂き、宿を発ち、近鉄電車に乗って帰ることにした。
楽しみにしてた吉野観光だけど、今回は諦めましょう。
今日の早朝に母宅を出て、ずっと運転を(交代で)続けて、奈良県の南部まで行き、希望が叶って玉置神社へお詣りした。あ!谷瀬の吊橋にも行けた。
まるで数日間のことのよう、凄まじい1日。
そして、布団に入った。
⑦へ続く