会話はごちそう、介護士はエサ【中編】
認知症の人のみが住まうグループホーム。
日々、理性などは飛んでる自分の欲を全開、
とっても短気になった80代や90代が主流。
「聞いて~」「なぁ、ちょっと」「こっち来てぇな」攻撃がくる。
獲物(エサ)を狩るハンターの様相
決して悪気はない、攻撃したい訳じゃない。
それは理解してます。
隙あらば職員を、少しでも長く独り占めしたい利用者さん(※ご本人の性質による)は、どこの施設(ホーム)にも存在する。
しかも、認知症の大きな特徴が…
数分前を忘れ、ループ延々
全員じゃない!!とは言えど、多くの患者さんは
数分前の記憶を失ってる。
数分前か、半時間前か、半日前か…の記憶力は、その人によって異なる。
全て丸ごと忘れてしまう、部分的には覚えてるか。その部分的が何かと何かの『物語のツギハギ』になることもある。聞く側にすれば
「何故そんなストーリーになってる??」と困惑、
めちゃ独創的ストーリーと化してて、なんとも微笑ましくなる内容も、時にはある。
「ごはん、まだ?」と食後すぐ聞くのは定番なら、
ある午後、いきなり「お昼、ウナギが出るらしい」と利用者さん達が言いだした。
え?なぜウナギ???と困惑する職員を置いて、鰻コールは広がり、職員達は…いやいや出ませんって…と焦る。「今、ウナギは季節外れやん?」「あ!今、テレビで鰻の養殖の話をしてる。これかぃ~」なんてケースは多々ある。
食べた自体を忘れたり、謎ストーリーができたり、
これは認知症という病気の症状の1つ。
1つ言えるのは、話してる側は真剣。
さらに。
ウナギは食べられないですと話し終えた数分後、再び「ちょっとぉ~」「今日の鰻は~」と職員を呼びつける。以下、同じ話を続けること複数回、
職員は同じ話を、ご本人は『初めて話す』認識、
毎回が初めて。
それは「今」すぐに言わなあかん!
緊急事項になってるので、待ったなし。
何かと職員へ話しかけて下さるのは、例えると、幼い子供が保育園で「センセ~」「ねぇ先生ってば、ねぇねぇ」と訴えるのにも、すこし似ている。
多くの利用者さんは、待てない。
今すぐ、ワタシの話を聞け!的な要求。
理性が薄まった高齢者も、成長過程の幼子も、その場その場に精一杯で向き合い、相手の状況は無視(目に入らないから考慮はできない)。
自分の主張や欲求が最優先。
これは仕方ないこと。
人として〈その状態に在る〉から。
だから、施設で過ごしてる。
それを受け止める、関りを持つのも介護士(保育士さんも)の業務の1つ。
問題はこれらの仕事場って
人手がなさ過ぎ、業務が追いつかず…
相手が満足できる程の〈お相手〉ができない事。
加えて「聞いて」「ねぇねぇ」には終りがない事。
「なぁ」「ねぇ」は延々と続く
どんな場でも、健全な大人の関係では、自分のことばっかり話す人は周囲から嫌がられる。いつの間にか避けられてしまう。
そんな人に捕まったら時間を盗られ、
妙に疲労感が残り、
話の内容によっては気分が悪くなる。
相手への配慮ができないと避けられ、人が離れる。それが自覚しづらい寂しさ、不満足感になり、ますます誰かを捕まえ「聞いてきいて」の悪循環。
ねぇねぇハンターと化す。
嫌がられてると知らずに。
私自身はやってた側だった、と子供時代と、大人になった自分とを振り返って、思う。相手の迷惑、状況を考えず「なぁ、聞いて~」をしてた。
今思えば、めちゃくちゃ恥ずかしい!!!
昔より、今の私は理性があり、
介護士になると傾聴を学ぶから、聞く側のほうにストレスが溜まると同時に、誰かの話をきちんと聞くのは相当に難しく、技術が要ると痛感する。
相手の言葉を受け止めるために耳を傾けるのは、案外と難しい。
つい自分の疑問を口にし、
相手の話の腰を折ったり、
話をズラし、相手が言いたい事を言わせてない…
ついつい自分の意見を述べてしまう。
案外と、やりがちで。
自分の事ばかり話すのは、相手から何かを奪うこと。
でも、認知症という病気には『数分前の会話を忘れる』特徴もある。
※いろいろある症状の中の1つ、ね
相手(この場合、利用者さん側)は自分から会話を終えてくれない。
だからこそ、介護士側から上手く切り上げる技量が要る。
仮に、他の業務がなくても、いくら業務の一環でも、キャッチボールにならない話し相手だけを延々と続けるって、ジワジワっと疲れがくる。
しかも、ほぼ毎日、それが続く仕事ゆえに
スタッフの心の疲労蓄積から身を守るべし。
介護士は腰痛や膝の痛み以外にも、メンタルにも気を付けて働くべし。
ハンターに捕まる介護士
介護士にも様々なタイプがいる。
その中でも、福祉のイメージを体現したような〈ふんわり優し気な雰囲気〉の、
いかにもお世話する役目が向いてそうな〈柔らかな言動〉の、
「めっちゃ介護が合いそうやね」と評される職員さん達は、注意が必要。
彼(彼女)は利用者さん達を引き寄せる。
これって(;´Д`) 時に困りもの、で。
彼/彼女が、そこに座って(立って)るだけで、恐いくらい自動的に、利用者さん達が集まってくる。それも取り巻くように来るわ、来るわ…
一人の介護士にワラワラ~と数人のお年寄り。
すごい勢い。
『引き寄せてる』以外の表現が思いつかない
複数スタッフがいて、彼/彼女にだけ利用者さんが集中する状況。
それが毎日。
優しいので「無碍(むげ)にできない」と言う。
これ、危険な状況ですっ!!!
勤務時間の内に終えるべき業務に追われ、優先すべき業務が他に山盛りある。でも、利用者さんが話したそうな様子に気付いてしまう。
気付く能力ピカ一★★★★★
で、気になって話し相手をする。
ここが👆👆分かれ道①で。気になって話し相手をするか?適度にかわし「あ~ごめんなさい、ちょっと待って頂けますか」と、ススス~っと避けるか?
限られた人数でお風呂介助、3食&おやつ準備、食事介助、洗い物とかたずけが常にあり、トイレの始末、ゴミ捨て、ケアプラン遂行、洗濯物の扱いなどなど
9人家族の家事を切り盛りする、とご想像下さい。
グループホーム勤務は9名が1単位(ユニット)。他形態の施設だと担当する人数はさらに多く、業務の一部は、例えば食事は専用厨房が担ってる等、異なるので、施設の定めるタイムラインに沿って動く。
何にしても終わりの見えない会話を、延々と付き合える余裕が、職員側にはない。
業務のスキ間に、優先度や必要に応じて利用者さん達の言葉に耳を傾ける。クドく執拗な話へも苛立った雰囲気は全く出さず、優しい笑顔は崩さず。
そして、ある程度の、お話をしたら「じゃ」と丁寧に切り上げる。
実際に働く以前、働いて以降の研修などで、介護士は〈ご利用者様に呼ばれたら、真っ先に駆け付けること〉と教え込まれる。
が、しか~し、介護士としてフルに勤務すると理想通りにいかない、この〈すぐ駆け付け〉〈きちんと応対しろ〉的な教えを、日々の仕事で、きちり守ったら全く(他の)業務が進まへん、と痛感させられる。
背後にてんこ盛り業務が待つ、ずっとお話してられない!!
ここが👆👆分かれ道②になる!!
「じゃ」が上手く言える職員か?
ハンターのほうが数枚上手で逃げられない職員か?
認知症に限らず、お喋りに飢えた人達が、エサ(自分の話に耳を傾ける親切な相手)を、「じゃ」で手放す訳がない。
それを見誤ったら、職員の休憩なんて消えるから~
凄腕!!
感心するくらいの技をお持ちで!!
そろそろ会話が終わりそうな…、目の前の人(職員でありエサであり、貴重な話し相手)が去りそうな、気配を察知すると「あ、あのね」「ところで」なんて言う、
会話をつなげる。
(~_~;) その手腕たるや!!!
介護士をする以前の私も、介護の現場を知らない、認知症の人と接した経験のない人も疑う「え?認知症の人が?」「そんな事できるんですか?」って、
できるんです、充分に!!
いくら認知症という病でも、人間生活を70年80年、90年以上もやってきた方達です。病で失った機能もあれば、しっかり残ってる技もある。
理屈とか計算じゃなく、感覚的に判るらしい。
もっと話してたいのに、相手は去ろうとしてる…
正に、ハンター目線で
ワタクシのエサが逃げていくわ~
こんな👆心境だろうな( ̄ー ̄)
そして、エサのことを〈察知〉もしてる、
介護士が似合いそうに優しい人は「じゃ」が出来ない。
〈楽しくお話した後は、ハンター達から華麗に離れょ!!〉なんて、現実を教えてくれる介護士向けの研修や、新人向けのレクチャーなんて
…ないから…
介護系の研修や勉強は、キレイゴトばかり。
