介護

老後にも、人間関係はある【中編】

mariri

いつまでも自宅に居たいんです

誰かのサポートを得ながら自宅で暮らし、それでも、立ち行かなくなる。

かなり準備して、身内へ「いよいよ認知症状が進んだら、〇〇ホームへ入居させて欲しい。手続きの大半は済ませてるから」なんて人は、おそらく相当な少数。

そもそも「施設なんかへ入るかっ」「死ぬまで自宅で暮らす」想いが多数。

2024年の、老後の話題に事欠かない現在も、施設のイメージは良くない。身の回り諸々が自力で無理になっても、本音を言えば施設はイヤ!な人は多い。

かなり初期頃の認知症なら、環境を整え、条件が揃い、周囲からサポートを貰えれば、自宅で暮らせる。そして、認知症の症状が進めば、望んでも(特に一人暮らしの場合は)自宅での暮らしは困難になる。

もう無理かな。まだいける?

結局は、認知症に罹った本人ではなく、周囲の誰かが決定を下す事となる。

周囲が「もう無理やし」と施設入居を進め、「ほな入るわ」とは言わない。

多くの利用者さんが「こんな所に来たくなかってん」「いつ帰らせて貰えんの?」「はよ帰りたいわ」等と言う。特に、夕暮れになると、ザワザワとした気持ちになられる。

渋々ながら入った場所で

そんな不承不承、仕方なく入居した認知症の80代90代が複数人。

グループホームでは、1つのユニット9名が単位。

9名は、出身地も、現役時代の夫の職業(年代的に)や子供の数/ご本人の職歴も、生活背景も、何もかもに共通点はない。9名の組合せは偶発的なもの

家族や本人が、入居の申込み時に指定はできない。

9個の部屋がある。どこか空けば、申込み待機中の中から誰かが入居。

A/B(C、D…)とユニットが複数あって、「Bで」など希望は通らない。

誰が、いつ退所して、どの部屋が空くか?など、施設側にも予測できない。

申し込みしていた施設が、たまたま空いたら入居。

この流れで、偶然に(ここポイント!)一緒に入居するメンバー。

同じ時期、一緒のユニットへ入居する人達が、穏やかで優しい気質の人達か?

荒々しいタイプはいないか?等は、運としか言えない。

仲良しが出来るか?

認知症が進行して、症状が進むほど『周囲の人・状況』より、「いかに自分が」快適か?安心か?嫌な事ないか?誰かを頼れるか?等が、ご本人には大切になる。

「そんな難しいこと、わからん」と口にされる。

このあたりの感覚は、利用者さん達から(言葉での)説明は得られない。スタッフ側がしっかり見定める。不快なら表情が曇るので、見落とさないようにする。

自分を含めた9名、担当職員たち。これが日々、顔を合わすメンバー。

そこに、事務スタッフ、訪問の医療者(歯科医・歯科衛生士、リハビリ療法士、訪問の看護士)、常駐する看護師、担当医などが加わる。顔を合わすのは毎日ではない。

現役時代に比べ、とても狭い人間関係になる。

自宅で暮らし、ご近所と交流してた人には物足りないだろう。

しかし、認知症の場合は、その交流じたい難しくなり、入所している。

同じ時期、施設に入った者どうし、仲良くなれるか?

運よく仲良しが出来ることもある、としか言えない。

入居申し込みで「母と気の合うような方、いますか?」など、期待されても施設は返答に困る。現役時代にも、誰か、新たに知り合う人と親しくなるには、時間が必要だったはず。施設でも同じこと、簡単に『友達になれそう』は出現しない。

もし、気が合いそうな組合せと感じたら、その利用者さん達には同席して頂く。そこで互いの雰囲気が良い、笑顔があったら、しばらく隣席をお試しで、様子を見守る。

施設では、同席者や隣どうしの席に、かなり気を使う。

上手くいけば良いが、波長が合わないまま隣席が続くと、認知症の方達は、言葉で苦情はないが、必ずや不穏な空気、言動がおかしくなる。慎重に見極める必要がある。

介護士のおしごと

見守る。

職場;グループホームや高齢者向けの施設では、ひん回に言われる。

利用者さん達からの本音を『言葉として』聞くことは難しい。

認知症が進み、言語じたい失っていく症状もある。又、内気で、口下手で、元から自分の想いを伝えることが苦手、そんな性格の(我慢してしまう)人もいる。

口で「大丈夫」と返し、本当に大丈夫と判断しない。老人施設あるある。

言葉にならない分、とても表情や態度には表れる。

だからこそ、その反応を見逃さず「あれ?もしかして嫌?」「この状態、嬉しくなさそうやね」「意外と楽し気」「わぁ、表情が曇ってる」「なんか体が強張ってる」等の、気付く事こそ介護士の大切な仕事になる。

日々、施設で暮らし「ここは自宅やない」と、認知症の進んだ方でも感じておられる。

病院のような場所。しばらく居るだけの場所。ずっとここに滞在しない。

でも、今は仕方なくここに居る。

自宅から出た外の世界、少し『よそ行き』の顔をされている。

他の利用者との兼ね合いも、職員が自分を大切にしてるかも、気になる。

認知症が進んでも、そういった感覚は残っている人が多い。

日々、職員は利用者さんの様子を、注意深く見守る。

でも、利用者さん達も職員の言動を、ジーッと観ておられる。

【自分も相手に見られている】

この感覚を、常に、介護士はもっておく必要がある。

ABOUT ME
しげり
しげり
介護士/西洋占星術占い師
関西で生まれ育つ。幾つかの職を経て介護士になる。主に認知症の方々のお世話して10年以上になる。2019年秋、ある日、なぜか西洋占星術(ホロスコープ)へ興味をもち、学び始める。知れば知るほど興味が尽きず、介護の仕事;コミュニケーションにも活用できると感じる。学んだら活かす、お互いに笑顔が浮かぶように。太陽は魚座/月は牡羊座
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