老後にも、人間関係はある【後編】
元は全く知らない人達と暮らす
高齢者向けの施設、に限らず『施設』という場所での人間関係は濃い。
利用者さん/職員の、
利用者さん/利用者さんの、
職員/職員の、
これまで接触なかった人達との、コッテリとした強い関わり。そりゃ、お風呂へ入るため(裸の状態)の手伝い、お尻を拭いたり、汚染物を処理されたりする関係に、イヤでもなるから。淡い関係な訳にはならず。
老後、施設へ入ったら「色んな面倒ゴトから解放され」のんびりできる…
そうイメージする人がいたら、アナタに言いたい!!
忘れてはいかん、人間である限り、人間と関わるので
介護施設へ入ってもあるんです、人間関係。
しかも、これまでの人生で接点なかったタイプ(生活背景)の人達と、同じ場所で、短くな年月を共に、暮らすことになるのが施設という場所。
認知症になる前からの性格が
介護士になる前、認知症への大きな誤解をしていた。それも沢山。
その1つが、
認知症を発症したら自分の人格が消える、って思い違い。
元の人格は完全には消えない。
認知症にもタイプがあり、人格に変化がでる症状もある。穏かな人が荒々しくなる、暴力や暴言がでる場合もある。でも、全員に当てはまらない。
多くの利用者さんをお世話して思う、「元々もった気質は残したまま、少しづつ違う面が表に出てくる」感じがする。
おっとりした人は、その性格のまま認知症になっても、スローペース
チャキチャキの、せっかちタイプは喋るのも食べるのも、やはり素早いまま
疑い深い人、一人暮らし歴が長く「用心せな」意識を強く持ってたら、やはり言動には警戒心の強さが残ってる
意地悪いこと言う人って、やはりイケズな面を残した言動(子供家族に嫌われている)
性格面で「現役時代を彷彿とさせる」人が多い。嫁と舅/姑を慕うお嫁さん達もいる。良くしておられますねと伝え、返ってくるのは「お義(父)母さんには良くして頂きましたから」「嫁いで間がない頃、助けて貰いました」等の言葉。
厳しい雰囲気をもつ利用者さんだが、きっとお嫁さんは大切にされていて、それが伝わってるんやな。そんな現役時代を垣間見えるご家族もある。
昔、した事が、老後に返ってくる。
仕方なく施設入居しても、頻回に息子家族や娘達が会いに来る。そんな家庭も、実は少なくない。それは、利用者さま本人の人柄によるもの。
現在の施設内は、大正時代、昭和初期に生まれた方が主流。いずれ大正生まれがいなくなれば、昭和の生まればかりになる。昭和の初期、その年代の人達が育った、生きてきた時代背景は、きちんと考慮しておく必要もある。
あと、お土地柄も。
せめて楽しい雰囲気で
施設へ入り、気の合わない相手がいても、職員は配慮する。相性が合わないなら同席にしない、密に接触しないよう気を配る。
9名、1つの単位で。それが数組(※施設の規模でちがう)。
どんな人と同ユニットになり、どんな職員が担当するのか、出たとこ勝負。
職員には異動がある。長く同じ場に留まらず、数年ごとに移り経験を積む。同じユニットに何年いても、利用者さんの退所/入居はあり、職員側の異動や退職/新な採用によるメンバー入れ替わりもある。
人間関係は濃いけど、移り変わっていき留まらない。
平安時代末期の歌人、鴨長明(かものちょうめい)さんも言っている、
〈ゆく川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず〉って。ユニット9名の暮らしも、そんな感じで移り変わっていく。10年以上、同じ職場にいても変化の連続。
一人の利用者さんが退所し、新な人が来たら。ユニットの雰囲気は大きく変わる。
一人の職員が異動などで去り、他の職員が来たら、やはり仕事中の空気は変わる。
同じメンバーで過ごす時間は、いつか終わる。
数分前のことを、覚えていられない重度な認知症の人もいる、
いつも楽ばかりじゃない、不穏なムードにもなるし、気の合わない者もいる。でも、
その時々、そこに居るメンバー(利用者さんも含む)と、良い雰囲気で過ごす。
絶えず人間関係はついて回るなら、せめて、そう在りたい。